身近なものでOK！遊びで子どもの考える力を引き出す簡単アイデア【発達支援】
遊びで育む子どもの「考える力」とは
子どもの成長において、「自分で考えて工夫する力」は非常に大切な要素です。目の前の課題に対して「どうすれば解決できるだろう？」「次はどうしてみよう？」と試行錯誤する経験は、論理的思考力や問題解決能力の土台となります。発達に特性のあるお子さんの中には、この「考える」「見通しを持つ」といった過程に難しさを感じることがあるかもしれません。
しかし、この「考える力」は、特別な訓練ではなく、実は日々の遊びを通して自然に育むことができるのです。特に、身近にあるものを使った遊びは、子どもがリラックスした環境で主体的に取り組めるため、考える力を引き出すのにとても効果的です。
この記事では、家庭にある身近なものを使った、簡単で楽しい「考える力」を育む遊びのアイデアと、実践のヒントをご紹介します。
遊びが子どもの考える力を育むメカニズム
なぜ遊びが「考える力」を育むのでしょうか。それは、遊びの中には自然と課題や目標が生まれ、子どもがそれに対して主体的に取り組むプロセスがあるからです。
例えば、積み木を高く積もうとする時、子どもは「どうすれば崩れないかな？」「もっと安定させるにはどうすればいい？」と考えます。パズルをする時は、「どのピースが合うかな？」「形をよく見てみよう」と観察し、推測します。このような試行錯誤の繰り返しが、脳を活性化させ、思考回路を鍛えていくのです。
また、遊びの中で成功体験を積み重ねることは、自信に繋がり、「もっとやってみよう」「別の方法も試してみよう」という意欲を引き出します。失敗したとしても、「こうするとうまくいかないんだな」という学びになり、次の挑戦への糧となります。
身近なものでできる！「考える力」を育む遊びアイデア
ここでは、特別な道具を必要としない、家庭にある身近なものを使った遊びのアイデアをいくつかご紹介します。
1. 積み木やブロックで「高く積む・長くつなぐ」遊び
最も手軽で普遍的な遊びの一つです。ただ積むだけでなく、少し目標を設定すると「考える力」をさらに引き出せます。
- 準備するもの: 積み木、ブロック、空き箱、ペットボトルなど、積み重ねられるものなら何でもOKです。
- 遊び方と効果:
- 「お父さんの背より高く積めるかな？」「この部屋の端から端までつなげてみよう」など、具体的な目標を提示します。
- 子どもは目標達成のために、どのピースを使うか、どう組み合わせれば安定するか、どうすれば長くつなげられるかを考えます。これは、空間認識能力や構造理解、そして計画性を育みます。
- 途中で崩れても、「どうして崩れたかな？」「次はどうすればいいかな？」と一緒に考えることで、原因と結果の関係を学び、問題解決のプロセスを経験できます。
2. 洗濯ばさみを使った仕分け遊び
洗濯ばさみは、指先の運動だけでなく、様々な応用ができる優秀なアイテムです。
- 準備するもの: 洗濯ばさみ（色や形が違うとさらに良い）、色画用紙、お菓子の空き箱、ひもなど。
- 遊び方と効果:
- 色画用紙に同じ色の洗濯ばさみをつけたり、厚紙のフチに洗濯ばさみを均等につけたりします。これは、分類や規則性を学ぶのに役立ちます。
- ひもをピンと張り、「この洗濯ばさみを全部ひもにつけられるかな？」と問いかけます。指先の巧緻性と共に、「どうすれば効率よくできるか」という思考プロセスが生まれます。
- 異なる素材（厚紙、薄紙、布など）に洗濯ばさみをつけてみて、「どれが一番つけやすいかな？」「どうしてかな？」と話すことで、観察力や比較検討する力を育めます。
3. 新聞紙や段ボールを使った秘密基地・工作
大きくて扱いやすい素材は、子どもの想像力と考える力を同時に刺激します。
- 準備するもの: 新聞紙、段ボール、セロハンテープ、はさみ（安全なもの）、ひもなど。
- 遊び方と効果:
- 「この新聞紙で大きな家を作ってみよう！」「段ボールで乗り物に変身させよう！」と声をかけます。
- 子どもは、素材をどう丸めるか、どう組み合わせるか、どう固定するかを考えます。これは、創造性、計画性、そして素材の特性を理解する力を養います。
- 「ここにも窓が欲しいな」「どうすればもっと丈夫になるかな？」といった会話を通して、アイデアを具体化するプロセスや試行錯誤を経験します。完成した時の達成感も大きいです。
4. 家庭内宝探しゲーム
簡単な仕掛けで、楽しみながら観察力や推理力を育めます。
- 準備するもの: おもちゃ、お菓子など宝物になるもの、ヒントを書いたメモ用紙。
- 遊び方と効果:
- 宝物を隠し、「リビングの背の高いものの隣だよ」「〇〇の色と同じものの下だよ」など、具体的なヒントを書いたメモをいくつか用意し、順番にたどっていくように隠します。
- 子どもはヒントを読み解き、家の中を注意深く観察し、次のヒントや宝物の場所を推理します。これは、観察力、推理力、注意の持続、そしてヒントを組み合わせる論理的思考力を育みます。
- 最初は簡単なヒントから始め、慣れてきたら少しずつ難易度を上げていくと、子どもの考えるレベルに合わせて調整できます。
実践のヒントと工夫
これらの遊びをより効果的に、そして楽しく行うためのヒントです。
- 結果よりプロセスを重視する: きれいに積めなくても、思い通りにできなくても大丈夫です。「どうやって作ったの？」「次はどうする？」と、子どもが考えたり工夫したりした過程に注目し、言葉にすることで、子どもは自分の行動を振り返り、次につなげやすくなります。
- 問いかけで考えるきっかけを作る: 「これはどうしたらいいかな？」「もしこうしたらどうなるかな？」など、答えを教えるのではなく、子ども自身が考えるような問いかけをしてみましょう。
- 失敗を肯定的に捉える: 失敗は新しい発見のチャンスです。「あれ？うまくいかなかったね。どうしてかな？」「次は違うやり方を試してみようか」と前向きな言葉をかけ、失敗を恐れずに挑戦できる環境を作りましょう。
- 子どものアイデアを尊重する: 大人の予想と違う使い方や発想が出てくることもあります。危険がない範囲で、子どもの自由な発想を認め、「面白いアイデアだね！」と肯定的に受け止めることで、考えること自体が楽しいと感じるようになります。
- 一緒に楽しむ: 親が一緒に「うーん、どうしようかな？」「こんな方法もあるかも！」と考える姿を見せることも、子どもにとって良い刺激になります。
他の家庭での体験談（フィクション）
あるお母さんは、お子さんが積み木をすぐに崩してしまうことに悩んでいました。高く積む遊びを提案しても、なかなか集中が続かない様子でした。そこで、目標を「崩れないように、一段ずつそっと積んでみよう」という簡単なものに変え、崩れても「あ、〇〇君、今度はもっとゆっくり置いてみようか」と優しく声をかけるようにしました。
また、積み木だけでなく、空き箱やペットボトルなど、様々な素材を混ぜて遊ぶようにしてみました。「この牛乳パック、硬いから一番下がいいかな？」「ペットボトルは軽いから上かな？」と、素材の特性について一緒に話しながら遊ぶことで、お子さんは少しずつ素材を考えながら積むようになりました。
最初はすぐに崩れて癇癪を起こすこともありましたが、お母さんが「大丈夫、もう一回やってみよう」と根気強く寄り添い、少しでも長く積めた時には「すごーい！さっきより高くなったね！」と具体的に褒めることを続けました。
数ヶ月経つと、お子さんは以前よりじっくりと積み木と向き合うようになり、どうすれば崩れにくいかを自分で考えたり、崩れてもすぐに諦めずに積み直したりする姿が見られるようになったそうです。「小さな積み重ねでしたが、少しずつ考える力が育ってきているのを感じます」とお母さんは話していました。
まとめ
子どもの「考える力」や「工夫する力」は、特別な教材や高度な知識がなくても、家庭にある身近なものを使った日々の遊びの中で、楽しく育むことができます。
大切なのは、完璧な作品を作ることではなく、子どもが試行錯誤する過程を大切に見守り、肯定的に働きかけることです。遊びを通してたくさんの「できた！」や「こうすればいいのか！」という発見を経験することで、子どもは自ら考えることの楽しさを知り、将来様々な困難に立ち向かうための大切な力を身につけていくでしょう。
ぜひ、今日からお子さんと一緒に、身近なもので「考える遊び」を楽しんでみてください。