遊びで育む比べる力・仲間分けする力:身近なものでできる分類・比較遊び【発達支援】
子どもの発達において、「これは大きい」「あれは小さい」と物の違いに気づいたり、「これは動物の仲間」「あれは乗り物の仲間」とグループ分けしたりする力はとても大切です。これは「比べる力」や「仲間分けする力」、つまり分類や比較といった認知的なスキルにあたります。
これらのスキルは、日常生活での物の整理、学校での学習(算数の量の比較、理科での分類など)、さらには複雑な情報を整理して理解する基礎となります。発達に特性のあるお子さんの中には、この分類や比較に難しさを感じることがあるかもしれません。
しかし、これらの力は、遊びを通して楽しく育むことができます。特別な道具は必要ありません。ご家庭にある身近なものを使って、お子さんのペースに合わせて取り組んでみましょう。
なぜ遊びで「比べる力」「仲間分けする力」を育むことが大切なのか
「比べる力」は、二つ以上のものを比べて、大きさ、色、形、重さなどの違いや共通点を見つける力です。例えば、「このリンゴとバナナ、どっちが大きいかな?」「同じ色のおもちゃはどれかな?」といったやり取りを通して育まれます。
「仲間分けする力(分類)」は、物の特徴に基づいて、あるグループにまとめる力です。例えば、積み木を色ごとに分ける、動物のカードを陸に住む動物と水に住む動物に分けるなどがあります。
これらの力は、単に知識を増やすだけでなく、物事を論理的に考え、情報を整理し、理解する上で重要な役割を果たします。遊びの中で繰り返し体験することで、お子さんは自然とこれらの認知的なスキルを身につけていきます。
身近なものでできる!分類・比較遊びのアイデア
ここでは、ご家庭にあるものですぐに始められる、比べる力・仲間分けする力を育む遊びをご紹介します。
遊び方1:大きさ比べっこ遊び
- 必要なもの: 大きさの違う様々なもの(積み木、靴、果物、おもちゃなど)を数種類。
- 遊び方:
- 二つのものを並べて、「〇〇ちゃんと△△くん、どっちが大きいかな?」と尋ねてみましょう。お子さんが指差したり、言葉で答えたりするのを待ちます。
- 三つ以上のものを準備し、大きい順や小さい順に並べる遊びに挑戦してみましょう。最初は二つの比較から始め、慣れてきたら数を増やします。
- 「一番大きいのはどれ?」「一番小さいのはどれ?」といった質問も効果的です。
- 発達への働きかけ: 視覚的な比較、言葉での表現(大きい、小さい、一番)、順序の理解、量の概念の基礎。
- 実践のヒント: 初めは極端に大きさが違うものから始めると分かりやすいです。お子さんが答えられない場合は、親御さんが実際に並べて見本を見せ、「こっちが大きいね」と言葉で説明してあげましょう。
遊び方2:色分け・形分け仲間探し
- 必要なもの: 様々な色や形のある身近な小物(おもちゃ、ボタン、洗濯ばさみ、ブロック、文房具など)。色や形ごとに分けられるように数を用意します。
- 遊び方:
- テーブルに小物を広げます。「赤いもの集まれー!」「丸いもの探せるかな?」などと声をかけ、同じ色のもの、同じ形のものをお子さんと一緒に集めてみましょう。
- タッパーや箱をいくつか用意し、それぞれの箱に「赤の箱」「青の箱」とラベルを貼ったり、「丸いもの入れ」「四角いもの入れ」と決めたりして、分類していきます。
- 最初は色分けから始め、慣れてきたら形、次は色と形の両方(例:赤い丸いもの)など、徐々に条件を増やしていきます。
- 発達への働きかけ: 特徴の認識(色、形)、分類のルール理解、視覚的な弁別、手指の巧緻性。
- 実践のヒント: まずは、明確な色の違い(赤、青、黄色など)から始め、次に原色以外の色、パステルカラーなどに広げます。形も、丸、四角、三角といった基本的な形から挑戦しましょう。お子さんが間違えても、「これは青い仲間かな?」と優しく声をかけながら、正しい場所に誘導してあげてください。
遊び方3:仲間はずれ探し遊び
- 必要なもの: ある仲間の中に、一つだけ違う特徴を持つもの(例:動物の絵カード数枚の中に乗り物の絵カードを一つ混ぜる、果物の中に野菜を一つ混ぜるなど)。
- 遊び方:
- いくつかのものを並べて、「この中に、一人だけ仲間が違うものがいるよ。誰かな?」と尋ねてみましょう。
- お子さんが指差したり、言葉で答えたりしたら、なぜそれが仲間はずれなのか理由を聞いてみます。「どうしてこれが違うと思ったの?」
- 発達への働きかけ: 特徴を捉える力、共通点と相違点を見つける力、推測する力、理由を説明する力、概念理解。
- 実践のヒント: 最初は明らかに違う特徴を持つものから始めましょう。理由を言葉で説明するのが難しくても、「動物さん」「ブーブー」といった単語や、ジェスチャーで伝えてくれれば十分です。
遊びをスムーズに行うための工夫
- 短い時間から始める: お子さんの集中力に合わせて、5分や10分といった短い時間から始めます。
- 無理強いしない: お子さんが乗り気でないときは、遊びのテーマを変えたり、別の日にしたりしましょう。遊びは楽しいものであることが一番大切です。
- 褒める: 結果だけでなく、取り組む姿勢や、「一つだけ仲間を見つけられたね!」「上手に同じ色を集められたね!」といった小さな成功を具体的に褒めて、お子さんの自信に繋げましょう。
- 見本を見せる: やり方が分からない様子であれば、親御さんが実際にやって見本を見せてあげます。
- 言葉を添える: 遊びながら、「これとこれ、同じだね」「これは赤のグループだよ」など、言葉で説明を加え、お子さんの理解を助けましょう。
他の家庭での体験談(フィクション)
あるお母さんは、お子さんが物の整理が苦手なことに悩んでいました。そこで、遊びを通して分類する力を育もうと、まずはおもちゃの分類から始めたそうです。最初はお母さんが「これは車さん」「これはブロックさん」と声をかけながら一緒に分け、一緒に入れる箱を決めました。すぐに完璧にはなりませんでしたが、毎日少しずつ続けるうちに、お子さん自身が「あ、これはこっちだ!」と言いながら、決まった場所に片付けられるようになってきたとのことです。遊びを通して物の「仲間」を意識できるようになったことが、整理整頓にも繋がった良い例です。
まとめ
物の分類や比較は、お子さんが世界を理解し、整理していくための基本的なスキルです。これらの力は、特別な訓練ではなく、ご家庭での日常的な遊びを通して楽しく育むことができます。
身近にあるものを使った簡単な遊びでも、お子さんは「どう違うのかな?」「どれが同じ仲間かな?」と考え、試行錯誤を繰り返しながら、大切な認知スキルを磨いていきます。
焦らず、お子さんの「できた!」をたくさん引き出しながら、遊びの時間を楽しんでください。そうした経験一つ一つが、お子さんの発達を優しくサポートしていくことに繋がるはずです。