遊びで育む計画力と段取り力:身近なものでできるステップアップ遊び【発達支援】
計画力と段取り力とは?遊びで育む重要性
子どもの成長において、「自分で考えて行動する力」は非常に大切です。その中でも、何かをする前に「どうすればいいか」「何が必要か」「どのような順番で行うか」を考え、準備をして実行する力、すなわち「計画力」や「段取り力」は、日々の生活や学習において基礎となる重要な能力です。
発達に特性のあるお子さんの場合、この計画を立てたり、物事の順序を理解したりすることに難しさを感じることが少なくありません。しかし、これらの力は生まれ持ったものだけでなく、経験を通して育んでいくことが可能です。
そして、その育みに最も適しているのが「遊び」の時間です。遊びの中では、子どもは楽しみながら自然と目標を設定し、達成するための方法を考え、試行錯誤を繰り返します。特別な道具や難しい知識は必要ありません。身近にあるものを使って、家庭で安全に楽しく、お子さんの計画力と段取り力を育む遊びを取り入れてみましょう。
なぜ遊びで計画力・段取り力が育めるのか
遊びは、子どもにとって最も意欲的に取り組める活動です。遊びの中では、子ども自身が「これをしたい」という目的を持ちます。その目的を達成するために、「どうしたらいいかな?」「何から始めよう?」と自然と考えが促されます。
- 目的意識を持つ: 「この積み木で高いタワーを作りたい」「お買い物ごっこでお店屋さんになりたい」など、具体的な目標が遊びの中に生まれます。
- 見通しを立てる: 目標達成のために、必要なものや手順を漠然とでもイメージしようとします。
- 計画を立てる: 「まずこれをやって、次にこれをしよう」という簡単なステップを考えます。
- 実行と修正: 計画通りに進まないこともありますが、その際にどうすれば良いか、別の方法はないかと試したり、大人からのヒントを得て修正したりします。
- 達成感を得る: 目標が達成できたときには、大きな達成感を感じ、次の遊びへの意欲につながります。
これらのプロセスは、まさに計画を立てて実行するという、実生活で必要な段取りの練習になっています。遊びを通して繰り返し経験することで、これらの思考や行動のパターンが身についていきます。
家庭でできる!計画力・段取り力を育むステップアップ遊びアイデア
身近なものを使って、準備も簡単な遊びを、お子さんの発達段階に合わせてステップアップしながら取り入れてみましょう。
ステップ1:簡単な順序を意識する遊び
まずは、物事の順番を意識することから始めます。
- 色や形を並べる遊び:
- 遊び方: 積み木やブロック、おはじきなど、同じ種類で色や形が違うものを準備します。「赤、青、赤、青」や「丸、三角、四角」のように、特定の順番で並べるよう促します。
- 準備: 積み木、ブロック、おはじき、ボタンなど、家庭にあるもの。
- 期待される効果: ルールに従って順番に配置することで、指示理解や順序の概念を学びます。次に何を置けばいいかという見通しを持つ練習になります。
- 簡単な料理ごっこ/お店屋さんごっこ:
- 遊び方: お皿にご飯を盛る、おかずを乗せる、といった簡単な料理の順序や、品物を並べてお金を払うといったお店屋さんの簡単な流れを模倣して遊びます。「最初にご飯をよそってね」「はいどうぞって渡してね」など、声かけで促します。
- 準備: お皿、スプーン、フォーク、おもちゃの食べ物、お金に見立てたもの。
- 期待される効果: 日常生活の簡単な手順を追体験し、役割を演じる中で自然な順序を学びます。
ステップ2:少し複雑な手順が必要な遊び
複数のステップを含む遊びに挑戦してみましょう。
- 簡単な工作遊び:
- 遊び方: 折り紙を折る、紙を貼って絵を作る、段ボールで簡単なものを作るなど、数ステップで完成する工作を行います。完成形を見せて、「これを作るにはまず何をすればいいかな?」と一緒に考えたり、工程を一つずつ確認しながら進めたりします。
- 準備: 折り紙、のり、はさみ、セロハンテープ、段ボール、色鉛筆など。
- 期待される効果: 完成という目標に向けて、必要な材料を揃え、複数の手順を踏む経験ができます。手と目の協応や集中力も養われます。
- 宝探しゲーム:
- 遊び方: 家の中に隠した宝物(おもちゃやシールなど)を見つけるゲームです。簡単なヒント(例:「黄色いものがある部屋だよ」「座るところの下にあるよ」)をいくつか出し、ヒントをたどっていくことで宝物が見つかるようにします。複数のヒントを組み合わせて考える練習になります。
- 準備: 宝物に見立てたもの、簡単なヒント。
- 期待される効果: 目標達成のために、与えられた情報を組み合わせて考え、行動する順序を意識する力が育まれます。
ステップ3:目標設定と計画が必要な遊び
子ども自身が目標を設定し、達成までの計画をある程度考える遊びです。
- 積み木やブロックでテーマを決めて作る:
- 遊び方: 「お家を作ろう」「車庫を作ろう」「動物園を作ろう」など、具体的なテーマを決めて積み木やブロックで作品を作ります。完成形をイメージし、「お家には何が必要?」「ドアはどうしよう?」など、細部を考えながら組み立てていきます。
- 準備: 積み木、ブロック。
- 期待される効果: 抽象的な目標から具体的な構造をイメージし、必要なブロックを選び、組み立てる順序を考える力が養われます。
- 簡単なルールのあるボードゲーム/カードゲーム:
- 遊び方: オセロ、UNO、簡単な人生ゲームなど、ルールに従って順番に駒を進めたりカードを出したりするゲームを行います。ゲームの目的(上がり、勝利)を理解し、どのように進めれば目的に近づけるかを考えます。
- 準備: ボードゲーム、カードゲーム。
- 期待される効果: ルールという制約の中で、相手の状況も考慮しながら、自分の番で何をすれば良いかを考える戦略性や、次の展開を見通す力が育まれます。
遊びの中で計画力・段取り力をスムーズに育むための工夫
遊びを通してこれらの力を育む際には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
- まずは「一緒にやる」から: 最初から子ども一人に任せるのではなく、大人が手本を見せたり、「次はこうしてみようか」と優しく声かけをしたりしながら一緒に進めます。
- 具体的な声かけ: 「これをやってから、次にあっちに行こうね」のように、「〜してから〜する」という順序を示す言葉を意識して使います。「まず最初にこれをやろうか」と始めを意識させたり、「これで終わりだよ」と終わりを意識させたりするのも効果的です。
- 成功体験を積ませる: 少し難しいと感じる場合は、目標を小さくしたり、手順を単純化したりして、子どもが「できた!」という成功体験を重ねられるようにします。
- プロセスを褒める: 結果だけでなく、「順番通りにできたね」「ちゃんと考えていたね」のように、計画したり段取りを踏んだりするプロセスを具体的に褒めることが大切です。
- 遊びの中で考える時間を与える: すぐに答えや方法を教えるのではなく、「どうしたらいいかな?」「何が必要かな?」と問いかけ、子ども自身が考える時間を与えます。
- 視覚的なサポート: 手順を図に描いたり、写真で示したりする「やることリスト」のようなものを作成することも、段取りの理解を助けます。
他の家庭での実践例・体験談
あるご家庭では、お片付けが苦手だったお子さんに、遊びの要素を取り入れてみました。まず、おもちゃの種類ごとに箱を用意し、それぞれにイラストのラベルを貼りました。そして、「おもちゃのお家をきれいにする探検隊になろう!」と声をかけ、どの箱に何を入れるか、どの場所から片付けるかを一緒に考えるようにしました。
最初は戸惑っていたお子さんですが、「まずブロックさんをこのお家に入れようね。次にぬいぐるみさんをあっちのお家に入れようか。」と具体的に声かけながら、一つずつ手順を踏んでいくと、以前よりスムーズにお片付けができるようになったそうです。「全部お家に入れてあげられたね!探検隊、大成功!」と達成感を共有することで、次のお片付けにも意欲的に取り組めるようになった、というお話です。これは、目標(お片付け)を達成するために、順番(段取り)を決めて実行するという、計画力・段取り力の育みにつながる良い例と言えます。
まとめ
遊びは、子どもの計画力や段取り力を自然な形で育む素晴らしい機会です。家庭にある身近なものを使って、簡単なステップから始めてみましょう。大切なのは、完璧を目指すことではなく、お子さんが遊びを楽しみながら、「どうすればできるかな?」と考える経験を積み重ねていくことです。
焦らず、お子さんのペースに合わせて、遊びを通して一緒に考え、工夫し、小さな成功を積み重ねていってください。その経験の一つ一つが、将来お子さんが自分で道を切り拓いていくための大切な力となっていきます。