見て聞いて覚える力を育む!遊びでできる子どもの記憶力アップ法【発達支援】
見て聞いて覚える力を育む!遊びでできる子どもの記憶力アップ法【発達支援】
子どもの成長において、「見たこと」「聞いたこと」を覚えておく力、つまり記憶力は非常に大切な土台となります。日常生活での出来事を記憶したり、お友だちとのやり取りを思い出したり、学校での学習内容を身につけたりするためには、記憶力が欠かせません。発達に特性のある子どもたちの中には、この記憶することに難しさを感じることがあります。
しかし、記憶力は特別な訓練だけでなく、日々の遊びを通して楽しく育むことができます。この記事では、家庭で簡単に、特別な道具を使わずにできる、遊びを通した記憶力の発達支援アイデアをご紹介します。
なぜ記憶力が大切なのでしょうか?
記憶力は、単に何かを暗記する力だけではありません。新しい情報を脳に取り込み、それを保持し、必要に応じて引き出す一連のプロセスです。この力は、以下のような様々な側面に影響を与えます。
- 日常生活: 今朝食べたものを思い出す、おつかいで頼まれたものを覚えておく、明日の予定を把握するなど。
- コミュニケーション: 相手の話の内容を覚えて応答する、以前の会話の内容を踏まえて話すなど。
- 学習: 文字や数字、計算方法、歴史の出来事などを覚える、先生の説明を理解して課題に取り組むなど。
- 社会性: 友達の名前や約束を覚える、遊びのルールを理解して覚えるなど。
記憶する力に支援が必要な場合、これらの日常生活や学習、社会性に関わる場面で困り感が出やすくなることがあります。
遊びで育む記憶力の種類
記憶力にはいくつかの種類がありますが、遊びを通して特に働きかけやすいのは、大きく分けて「見たことを覚える力(視覚記憶)」と「聞いたことを覚える力(聴覚記憶)」です。
- 見たことを覚える力(視覚記憶): 絵カードの絵柄、ものの位置、顔、文字の形などを目で見て覚える力です。
- 聞いたことを覚える力(聴覚記憶): 音、言葉、指示、物語の内容などを耳で聞いて覚える力です。
これらの記憶力は、それぞれ異なる遊びを通してバランス良く育むことが大切です。
家庭でできる!見て聞いて覚える力を育む具体的な遊びアイデア
特別な準備や高価な道具は必要ありません。家庭にある身近なものを使って、今すぐ始められる遊びをご紹介します。
1. 見たことを覚える遊び
神経衰弱・絵合わせカード
- 準備: トランプ、市販の絵合わせカード、または厚紙に同じ絵や記号を2枚ずつ書いたもの。
- 遊び方: カードを裏返して並べ、2枚ずつめくって同じ絵柄が出たらペアとして取る遊びです。
- 発達への働きかけ: カードの位置と絵柄をペアで覚えることで、視覚記憶と集中力を養います。最初はカードの枚数を少なくしたり、絵柄の種類を絞ったりして難易度を調整できます。
ものの位置を覚える「どこかな?」ゲーム
- 準備: 小さな箱やコップなど、中身が見えないもの。小さなおもちゃや消しゴムなど。
- 遊び方: 複数の箱を並べ、子どもに見えないように一つの箱の中に小さなおもちゃを隠します。箱の位置をシャッフルし、子どもに「おもちゃはどこかな?」と尋ねて当ててもらいます。
- 発達への働きかけ: ものの位置を視覚的に記憶し、複数の選択肢の中から正解を選ぶ力を育てます。箱の数を増やしたり、隠すものを複数にしたりすることで難易度を上げられます。
絵本のページを覚えて話す
- 準備: 子どもが好きな絵本。
- 遊び方: 絵本を読み聞かせた後、前のページや少し前のページの絵や内容について、「この絵には何があったかな?」「さっき、〇〇はどうなったんだっけ?」と優しく尋ねてみます。
- 発達への働きかけ: 絵本の絵や物語の流れを視覚的、聴覚的に記憶し、それを言葉で表現する練習になります。子どものペースに合わせて、簡単な質問から始めましょう。
2. 聞いたことを覚える遊び
おつかいゲーム
- 準備: 特になし。家庭内のもの。
- 遊び方: 「リビングに行って、テーブルの上にある赤いペンを持ってきてくれる?」のように、簡単な指示を一つまたは複数出し、子どもに実行してもらいます。
- 発達への働きかけ: 聞いた指示の内容を順番通りに記憶し、行動に移す聴覚記憶と実行機能を育てます。最初は指示を一つだけにし、慣れてきたら「赤いペンと、本棚にある青い本を持ってきて」のように、指示の数を増やしていきます。
しりとり
- 準備: 特になし。
- 遊び方: 言葉の最後の文字から始まる言葉を順番に言っていく遊びです。
- 発達への働きかけ: 前の人が言った言葉を正確に聞き取り、記憶し、そこから新しい言葉を連想する聴覚記憶と言語能力を養います。ルールを理解し、順番を守る練習にもなります。
リズムや音を真似っこ
- 準備: 手拍子、カスタネット、太鼓など、簡単な音が出せるもの。
- 遊び方: 保護者が手拍子や楽器で簡単なリズムや音のパターンを示し、子どもにそれを真似してもらいます。
- 発達への働きかけ: 聞いた音のパターンを聴覚的に記憶し、運動として再現する力を育てます。短い、簡単なパターンから始めて、徐々に長く複雑にしていきます。
実践のヒントとスムーズに行うための工夫
- 「やらされる」ではなく「一緒に楽しむ」: 何よりも大切なのは、子どもが楽しいと感じることです。遊びを通して自然に記憶力を使えるように、無理強いせず、大人がリードしながら一緒に楽しみましょう。
- 子どもの得意・不得意に合わせて: 最初は子どもの得意な種類の記憶(例えば、見たことを覚えるのが得意なら視覚記憶の遊びから)から始めると、成功体験を積みやすくなります。
- 成功したら大げさに褒める: 「すごい!よく覚えてたね!」「バッチリ正解!」など、具体的に褒めて達成感を共有しましょう。
- 失敗しても大丈夫: 覚えられなくても、「次はきっとできるよ」「一緒にやってみよう」とポジティブな声かけを心がけ、再チャレンジを促します。責めたり、「どうして覚えられないの?」と言ったりすることは避けてください。
- 日常生活の中に遊びを取り入れる: 買い物のリストを一緒に確認する、今日の出来事を一緒に振り返る、明日の準備を声に出して確認するなど、普段の生活の中で意識的に記憶を使う機会を作ることも有効です。
他の家庭でのエピソード
あるお母さんは、お子さんが神経衰弱でなかなか絵柄を覚えられず、すぐに飽きてしまうことに悩んでいました。そこで、最初はカードを4枚だけにし、表にしたまま「この絵はどこかな?」と指差しゲームのように遊び始めました。慣れてきたら、絵柄を見せた後に裏返して少しだけ時間を置いてから尋ねるようにしたり、裏返す枚数を少しずつ増やしたりしました。すると、お子さんは「できた!」という経験を通して自信をつけ、だんだん集中して遊べるようになったそうです。
また別のお母さんは、おつかいゲームで指示が一つでも難しいお子さんに対し、「〇〇を取ってきてね」と言った後、一緒に歩いて行って「これだよ」と確認し、次の日には少し離れた場所から指示を出す、というように、少しずつ距離や難易度を調整しました。繰り返し行ううちに、お子さんは指示を覚えて行動できるようになり、「自分でできた!」と嬉しそうな表情を見せるようになったとのことです。
まとめ
子どもの記憶力は、日々の生活や学習の基盤となる大切な力です。特別な訓練や教材がなくても、家庭にある身近なものを使った遊びを通して、楽しく自然に育むことができます。「見て覚える」「聞いて覚える」それぞれの遊びを取り入れながら、お子さんの興味やペースに合わせて進めることが成功の鍵です。
遊びは、子どもにとって最高の学びの場です。一緒に笑い、一緒に悩み、一緒に「できた!」を喜び合う中で、お子さんの記憶力はもちろん、親子の信頼関係も育まれていきます。今日から早速、一つでも試してみてはいかがでしょうか。
遊びを通して、お子さんの可能性を一緒に広げていきましょう。