遊びで育む子どもの見通しを持つ力:家庭でできる簡単アイデア
見通しを持つ力とは
「見通しを持つ力」とは、これから起こる出来事を予測したり、何かを達成するために必要な手順や段取りを考えたりする力のことです。この力は、日常生活において、物事を計画的に進めたり、気持ちを落ち着かせたりするために非常に重要になります。
例えば、 * 「お風呂の後に絵本を読む」という見通しがあるから、お風呂に落ち着いて入れる。 * 「このパズルを完成させるには、まず外枠からピースを並べる」という手順の見通しを立てる。 * 「今これを頑張れば、後で好きなことができる」という見通しを持って取り組む。
など、私たちは日常的に様々な場面で見通しを立てながら行動しています。
発達に特性のあるお子さんの中には、この見通しを持つことが苦手な場合があります。先のことが予測できないことによる不安が強くなったり、段取りが分からず行動が止まってしまったりすることがあります。
しかし、この見通しを持つ力は、遊びを通して楽しく育むことができます。特別な道具は必要ありません。いつもの遊びに少しの工夫を加えるだけで、お子さんの見通しを立てる力をサポートすることが可能です。
家庭でできる!見通しを育む遊びアイデア
ここでは、家庭で簡単にできる、見通しを持つ力を育む遊びをいくつかご紹介します。
1. 簡単な料理やお菓子作り
お子さんと一緒に簡単な料理やお菓子作りに挑戦してみましょう。クッキー作り、おにぎり作り、簡単なサラダ作りなどがおすすめです。
- 遊び方:
- 何を作るか決め、完成までの大まかな流れ(材料を混ぜる→形を作る→焼く/冷やす→完成)をお子さんに伝えます。
- 手順を箇条書きにした簡単なリストや、絵で示したカードなどを用意すると、より見通しやすくなります。
- お子さんと一緒に一つ一つの工程を進めていきます。
- 「次は材料を混ぜる時間だよ」「これが終わったら焼くんだね」など、次の手順やゴールを声に出して確認しながら進めます。
- 育める力: 一連の手順を理解し、順番通りに進めることで、段取りを考える力や、工程全体の流れを見通す力が育まれます。完成を楽しみにすることで、目標に向かって取り組む意欲も高まります。
- ポイント: 最初はごく簡単な2~3ステップのものから始めましょう。多少手順が前後しても大丈夫。「次はどうするのかな?」と優しく促しながら、自分で気づくことをサポートします。
2. パズルやブロックを使った「お手本作り」遊び
完成形を意識して取り組むパズルや、お手本を見て同じものを作るブロック遊びも、見通しを育むのに役立ちます。
- 遊び方:
- まず、保護者の方が簡単なブロック作品(例えば、ブロックを3つ縦に積んだものや、簡単な車の形など)をお手本として作ります。
- お子さんに「これと同じものを作ってみよう!」と伝えます。
- お子さんがお手本を見ながら、どのようにブロックを組み合わせれば同じ形になるか考えられるようサポートします。「どのブロックを使ったらいいかな?」「どこから作るとやりやすいかな?」など声かけをします。
- 慣れてきたら、少しずつ難しい形に挑戦したり、お子さん自身にお手本を作ってもらい、保護者が真似る番になったりするのも楽しいでしょう。
- 育める力: 完成形というゴールを見据えて、必要なピース(ブロック)を選び、手順を考えながら作業を進めることで、見通しや計画性が育まれます。お手本と自分の作品を比較し、違いに気づくことも、先の状態を予測する力につながります。
- ポイント: 最初はお手本のブロックの数を少なくしたり、同じ色のブロックを使ったりして、見通しやすくします。上手くできたら「お手本と同じようにできたね!」「よく見て作ったね!」と具体的に褒めましょう。
3. 簡単な宝探しゲーム
「宝探し」は、ヒントをたどってゴールを目指す遊びであり、見通しを立てる絶好の機会となります。
- 遊び方:
- 家庭内や庭など、安全な場所に「宝物」(お気に入りのおもちゃやおやつなど)を隠します。
- 宝物のある場所につながる簡単な「ヒント」(例えば、「キッチンにあるもの」「リビングのソファの下だよ」など)をいくつか用意します。
- 最初のヒントをお子さんに渡し、「このヒントの場所に行くと、次のヒントが見つかるよ。最後のヒントの場所に宝物があるから、探してみよう!」と遊びのルールを説明します。
- お子さんがヒントをたどりながら宝物を探すのをサポートします。
- 育める力: 一つのヒントから次のヒントの場所、そして最終的な宝物の場所を予測しながら進むことで、見通しや予測する力が養われます。ヒントの意味を理解し、行動を計画することも学びます。
- ポイント: 最初はヒントの数を少なくし、それぞれの場所を近くに設定して簡単にします。ヒントは絵や写真を使うなど、お子さんの理解しやすい方法を取り入れましょう。途中で行き詰まったら、「ヒントは〇〇って書いてあるけど、これはどこにあるかな?」など、優しく導きます。
遊びの中で意識したいこと
これらの遊びを通して見通しを育む上で、いくつか意識しておきたい点があります。
- スモールステップで: 最初から難しいことに挑戦せず、お子さんのペースに合わせて、簡単なことから始めましょう。成功体験を積み重ねることが大切です。
- 言葉と視覚でサポート: 手順やゴールを言葉で伝えながら、可能であればリストや絵カードなど、視覚的に見通しやすいものを用意すると効果的です。
- 成功を具体的に褒める: 目標に向かって取り組めたこと、手順通りにできたこと、先のことを考えて行動できたことなど、具体的な行動を褒めることで、お子さんの意欲につながります。
- 失敗も学びの機会に: うまくいかなかった時も、「次はこうしてみようか」「ここが少し難しかったかな?」など、前向きな言葉で振り返りをサポートします。失敗から学び、次に活かすことも大切な見通しを立てる力の一つです。
他の家庭での実践例
あるご家庭では、お風呂に入る前に「お風呂に入る→体を洗う→湯船につかる→おもちゃで遊ぶ→出る→着替える」という手順を絵カードにして壁に貼り、毎日確認するようにしたそうです。最初は順番を意識できなかったお子さんも、絵カードを見ることで「次はこれだね」と自分で確認し、見通しを持ってスムーズにお風呂に入れるようになったという事例があります。
また別のご家庭では、週末の予定を簡単なイラストで描いたカレンダーをリビングに貼り、「明日は公園に行く」「明後日はおばあちゃんの家に行く」といった見通しを立てるようにしたところ、予定外の出来事への不安が減り、落ち着いて過ごせる時間が増えたというお話もあります。
まとめ
見通しを持つ力は、お子さんが安心して日々を過ごし、新しいことに挑戦していくための大切な土台となります。今回ご紹介したような遊びは、家庭にある身近なものを使って、親子で楽しみながら取り組むことができます。
焦らず、お子さんの「できた!」を大切にしながら、遊びを通して見通しを育むサポートを続けていきましょう。小さな一歩が、お子さんの大きな成長につながっていくはずです。