遊びで育む順序付けの力:家庭でできる並べる・順番遊び【発達支援】
順序付けの力が子どもの発達に大切な理由
私たちの日常生活では、様々なものを「順番に並べる」「大小を比較する」「手順を踏む」といった「順序付け」の考え方が非常に重要になります。例えば、服を着る順番、料理の手順、電車の乗り換え、時計の読み方など、多くの場面で順序立てて考える力が必要です。
子どもの発達においても、この順序付けの力は、物事を論理的に捉え、整理する認知能力や思考力の基礎となります。例えば、数の概念の理解、時間の感覚、読み書きの習得、そして将来の学習や問題解決能力にも深く関わってきます。発達に特性のあるお子さんの場合、こうした順序立てて考えることが苦手な場合があります。遊びを通して、楽しくこの力を育んでいくことが大切です。
この能力は、特別な学習ではなく、日々の遊びの中で自然と身につけていくことができます。ここでは、家庭にある身近なものを使って、遊びながら順序付けの力を育む具体的なアイデアをご紹介します。
身近なものでできる!順序付けを育む遊びアイデア
順序付けの遊びは、特別な道具は必要ありません。家庭にある様々なものを活用できます。
アイデア1:長さ順に並べてみよう!
- 準備するもの: 鉛筆、ストロー、リボン、紐、割り箸など、長さの違うもの数本。
- 遊び方:
- 長さの違うものを数本用意します。最初は3~4本から始めましょう。
- 「一番長いのはどれかな?」「一番短いのはどれかな?」と問いかけながら、一緒に見ていきます。
- 「短いものから順番に並べてみようね」と声をかけ、お手本を見せながら一緒に並べていきます。
- 慣れてきたら、本数を増やしたり、見た目があまり変わらないような微妙な長さの違いのものを用意したりしてみましょう。
- 発達への働きかけ: 長さを比較する力、大小を認識する力、順序立てて並べる思考力、手先の協調性。
アイデア2:大きさ順に積み上げてみよう!
- 準備するもの: 大きさの違う積み木、空き箱、おもちゃなど。
- 遊び方:
- 大きさの違うものを数個用意します。
- 「一番大きいのはどれかな?」「一番小さいのはどれかな?」と問いかけながら、大きさを比べてみます。
- 「大きいものから順番に積み上げて、タワーを作ってみよう!」と声をかけ、一緒に積み上げていきます。小さいものから大きなものを積み上げるのは難しいこと、逆に大きなものから小さなものを積み上げる方が安定することを体験的に学びます。
- 積み上げるのが難しければ、横一列に並べるだけでも十分な学びになります。
- 発達への働きかけ: 大きさを比較する力、空間認知力、バランス感覚、問題解決思考。
アイデア3:数順に並べてみよう!
- 準備するもの: ブロック、おはじき、どんぐり、消しゴムなど、同じ種類のものがたくさん。紙やトレイ。
- 遊び方:
- 紙やトレイの上に、数を変えて並べたグループをいくつか作ります。(例:ブロック1個のグループ、2個のグループ、3個のグループ)
- それぞれのグループの数を一緒に数えます。「これはいくつあるかな?」「こっちは?」
- 「数が少ないものから順番に並べてみようね」と声をかけ、グループごと順番に並べていきます。
- 慣れてきたら、お子さん自身にグループ分けから任せてみましょう。
- 発達への働きかけ: 数の概念の理解、数える力、量的な比較、順序立てて考える力。
アイデア4:色のパターンを作ってみよう!
- 準備するもの: 色の違う積み木、ブロック、ボタン、折り紙の切れ端など。
- 遊び方:
- 「赤、青、赤、青...」のように、簡単な色のパターンを提示し、「次は何の色かな?」と問いかけます。
- お子さんと一緒に、提示されたパターンを真似して並べていきます。
- 慣れてきたら、「赤、赤、青、赤、赤、青...」のように少し複雑なパターンや、「赤、青、黄色、赤、青、黄色...」のように3色以上のパターンに挑戦します。
- パターンが完成したら、「赤、青、赤、青...って、どんな順番で並んでるかな?」と一緒に確認します。
- 発達への働きかけ: パターン認識、規則性の理解、集中力、予測する力、視覚認知。
遊びを通して順序付けの力を育むためのヒント
- スモールステップで: 最初は簡単なものから始め、お子さんの理解度や集中力に合わせて、徐々に難易度を上げていきましょう。物の数や種類を減らしたり、色分けするなど、補助的な手がかりを用意するのも良い方法です。
- 楽しむことを最優先に: 無理強いはせず、お子さんが興味を持ったものを使い、楽しい雰囲気で行うことが一番大切です。「できたね!」「すごいね!」とたくさん褒めて、自信に繋げましょう。
- 声かけを工夫する: 「どっちが大きいかな?」「次にくるのは何かな?」「一つずつ順番に置いてみようね」など、具体的な言葉で働きかけ、順序や比較の概念を意識できるように促します。
- 日常生活と結びつける: 遊びだけでなく、日常生活の中でも「靴下を履いてから靴を履こうね」「まず手を洗ってからご飯を食べようね」など、自然な形で順序を意識する声かけをしてみましょう。
あるご家庭での体験談
あるお母様は、お子さんが物の順番を理解するのが苦手だと感じていらっしゃいました。そこで、まずは大好きなおもちゃのミニカーを使い、大きさ順に並べる遊びを始めたそうです。最初は全く分からず、適当に置いてしまうことが多かったのですが、「一番小さいのはどれかな?」「それは大きいね、小さいのはこっちかな?」と優しく声かけを続けました。すぐにできなくても、お母様がお手本を見せながら一緒に並べることを繰り返しました。
数週間後、ミニカーを並べた際に、一番小さいものと一番大きいものを正確に指せるようになり、短い列であれば一人で順番に並べられるようになったとのことです。「遊びを通して、少しずつですが確かに理解が進んでいると感じました。何より、無理なく親子で楽しく取り組めたことが嬉しかったです」と話していらっしゃいました。
まとめ
順序付けの力は、お子さんが様々なことを学び、日常生活を送る上で大切な基礎となる力です。特別な道具がなくても、家庭にある身近なものを使って、遊びの中で楽しく育むことができます。
焦らず、お子さんのペースに合わせて、まずは「楽しい!」と思える遊びから始めてみましょう。遊びを通して繰り返し体験することが、順序や順番を理解する力を着実に育んでいくことにつながります。日々の遊びの時間の中で、ぜひ順序付けの視点を取り入れてみてください。